これがバチカンだ

ローマに着いた24日の夜中近く、
どこかへ向かう車の列が目についた。
みんなバチカンへ向かっているのか?

信者じゃないけど、バチカンが見えてくると
なんだか神聖な気持ちになってしまう。
国境前には警察の車が鈴なりになっているが、
もちろん入国チェックなどなく、
国境沿いに立てられている柵の隙間から入れる。
意外にあっけない。

赤と白の縞々の柵が国境

サンピエトロ広場の真ん中には
巨大なクリスマスツリーと等身大のキリスト生誕の図。
そしてサンピエトロ寺院の前にはたくさん椅子が並べられ、
周りにはスピーカーや大画面。
ここでクリスマスの晩にローマ法王の説教を聞いたのかなあ。

さてサンピエトロ寺院に入る。
正面からは入れず、横の回廊から入る。
ここは入るのにチェックが厳しかった。
もちろん一人一人の荷物チェック、さらに金属探知器。
子供ももちろんチェックされる。
階段をのぼってやっとこさサンピエトロ寺院の目の前にやってくる。
するとロングコートのイタリア人が寄ってきて
「ベビーカーはダメ。手荷物預かり所に置いてきて」と言われる。
この日は雨。
手荷物預かり所は階段の下。
ダンナがベビーカーを置きに行っている間、
何人も同じ目にあって呆然としている家族を目にする。
防犯上なのか知らないが、子連れの苦労を知らないな!

寺院内はものすごく広い。
たくさんの観光客がいるのにもかかわらず、
その多さを感じさせない。
寺院の壁の上の方にラテン語なのだろうが、
お祈りの文句のようなものが大きな字で書かれている。
ここだけじゃなくて他の教会でも見かけた。
ステンドグラスやモザイク画、いわゆる宗教画などではなくて、
字が書いてあるのってなんだか不思議だなあ。
常にお祈りの文句が中に流れているような気がする。

さて下調べ不十分の我が家は
このサンピエトロ寺院に何があるのか分からず、
唯一分かっていたミケランジェロ設計の天蓋を眺めた程度(↓写真)。

システィーナ礼拝堂への入り口が分からず断念。
バチカン美術館は時間切れ。

さてサンピエトロ広場に戻ると、
広場の片隅に望遠カメラを構えた人もいる人だかりが。
見るとある建物のある窓に深紅の布がかかって開いている。
あそこに誰か出てくる?
出てくるとしたらローマ法王しかいないだろう。
でも今日は26日。もうクリスマスも過ぎてしまった。
じゃあ一体誰が出てくるのか?とわくわくしていたら…

↑ローマ法王はどこにいるでしょう?

本当にローマ法王が出てきた。
しかもなんだか説教を始めた。
イタリア語だから全然分からないが、
最後にグレゴリオ聖歌のように
メロディをつけて歌うようにしゃべっていたのは
ちょっと感動した。

ホテルに帰ってからもう一度ガイドブックを読んでみると、
なんだか見どころがいっぱいあるらしい。
バチカン美術館も行かねばならないので、もう一度行くことにする。

さてバチカン二日目。
サンピエトロ寺院にあるミケランジェロの「ピエタ像」を見た後(↓写真)、

システィーナ礼拝堂の入り口を探すがまたも分からず。
バチカン美術館の地図を見ると、
どうやらそちらからもシスティーナ礼拝堂に行けるらしい。
ということで、バチカン美術館に行くことにした。

サンピエトロ広場からバチカン美術館の入り口まで約1キロ。
バスもあるらしいが乗り場がわからず、
車で近くまで行く。
近くまで行ったつもりが入り口はまだまだ先だった。
そびえ立つ城壁に沿ってひたすら入り口を探し進む。
人だかりがしている場所があったので、ようやく着いたのだと分かったが、
同時にその日は13時までということも判明。
ガイドで事前に知っていたものの、
こんなだだっ広い美術館を一日4時間しか開館しないなんて。
毎日通えということか。

入場券売り場は長蛇の列。
うちはベビーカー持ちだったので近くまでエレベーターで行けたが、
列には並ばないとならない。
大混雑のためか、横入りし放題。
買えるまでにずいぶんと時間を無駄にする。
子供はただだった。
ここではベビーカーも中に入れた。

ベビーカーだったのでエレベーターに乗せてくれたのだが、
いきなり最上階に連れて行かれる。
館内の様子がまるで頭に入っていなかったので、
これからどうしていいのか戸惑う我が家。
案内のおじさんに教えてもらって突き進む。
この時点で残り時間一時間。
ということで、見るものをラファエロの「アテネの学堂」と
システィーナ礼拝堂に絞る。

「アテネの学堂」は私が中学生のときに出会って以来
魅了し続けられている絵画。
これを見ずにローマから帰れない。
システィーナ礼拝堂に行く途中に
ラファエロの間というのがあるらしい。
そこに「アテネの学堂」もあるということなので、
システィーナ礼拝堂への順路に沿って進む。
その途中にもいろいろな絵が飾ってあったが、
すごい人ごみでなかなかゆっくり見れない。
「ここがシスティーナ礼拝堂か?」というようなところに出てから、
かなり歩かされる。
そこはまだバチカン美術館内だった。
広い回廊のようなところに大きなタペストリーが一面に飾られ、
これはこれで美しいし迫力がある。
ゆりちゃんはこのタペストリーが気に入ったようだった。

そのうち一面に壁画が施された部屋に入ってくる。
ラファエロの間に来たらしい。
壁も天井も全面壁画。
そしてついに「アテネの学堂」とご対面。

もしやと思ったが、これも壁画だったのだ。
こんなに大きなものだったなんて…。
そして絵の上の半円は絵に描き込まれたものではなく、
壁の形だったことも判明。
この部屋ももちろん全面壁画。

「アテネの学堂」の向かい側の壁画

ここからシスティーナ礼拝堂への順路は狭く険しいものだった。
何しろ人が二人並んで歩くのがやっとというような
狭い廊下をえんえんと歩かされる。
時々ベランダのようなところ(つまり外)も歩かされる。
しかも階段まであった。
ベビーカーで入れたはいいものの、
この階段攻撃には参った。
すごい迷惑。
でもこんなに歩かされるなんて、
やっぱりシスティーナ礼拝堂は
サンピエトロ寺院側から入ったほうが
楽なんじゃないだろうか?
もう階段はいいかげんにしてくれえ。
と思っていたら…

開けたところに出た。
システィーナ礼拝堂だった。
今までのところはフラッシュ制限などはあったものの、
写真を撮ることができた。
しかしシスティーナ礼拝堂は
カメラはおろか、ビデオも禁止。
礼拝堂中にごった返す人々は
ひたすら壁と天井を見つめ続ける。
つい最近修復が終わったばかりの
ミケランジェロの天井画や「最後の審判」、
色鮮やかによみがえってそれはそれで素晴らしかった。
多分製作当時の姿を取り戻したのだと思う。
でもなんというのか、
薬師寺の金ぴかの西塔を見たときのような
にせものっぽさも否めなかった。
帰り際に画集を買ってあとでめくったときに
「この本物を見たんだ…」という実感が湧いてきたのだから
なんだか情けない。

システィーナ礼拝堂は保存芸術になってしまったのかと思っていたら、
今でも重要な行事(というのか分からないが)では使われているそうだ。
現役なのだとわかってちょっと嬉しかった。
ミケランジェロの壁画たちも
本来の目的に使われてこそ輝きが増すというものだろう。

見逃したものも多い。
バチカンには再訪を誓ったのだった。

<教訓>

バチカンは見どころてんこもりなので、
事前の綿密な研究が必須です。
それだけでなく、できれば建物内の構造も
頭に叩き込んでおいた方が
効率よく回れると思います。