「最後の晩餐」あれこれ

ミラノに「最後の晩餐」がある。
せっかく行くんだから、これくらいは見に行こう。
うちにあるガイドには「要予約」になっている。
ダンナが「代理店に予約を頼めば?」と言った。
ところが代理店のおばちゃんは「予約はいらない」と言う。
「でもガイドにはいるって書いてありました」
「イタリアに住むいとこにも聞いたけどいらないって言ってた」
「でも見て。ここに『要予約』って書いてあるでしょう?」
とうとう私たちはフランスで買ったイタリアガイドを示した。
さすがにこれは効いたのか、
おばちゃんはそこに出ていた予約番号に電話してくれた。
そのときは「午前中はやっていないみたいなので午後かけてみる」
ということだった(これがイタリアか)。

その後旅行のクーポンを取りに行ったとき、
おばちゃんが「やはり予約は必要らしい」と教えてくれた。
おばちゃん自身はグリーンのミシュラン
(ミシュランガイドの旅行版)ともう一冊調べたらしいのだが、
そこには出ていなかったので、必要ないと思ったそうだ。
しかし、てっきりおばちゃんが予約を取ってくれると思っていたのに、
「英語かフランス語が通じるから、なるべく早めに電話してみてねー」と
明るく、でも突き放されたのだった。

家に帰り、誰が予約電話をかけるかでもめたが、
結局ダンナにかけさせる。
もちろん英語が通じた。
うちが電話したのは17日、予約したかったのは24日。
手元のガイドには「観光シーズンには一ヶ月前、
冬なら一週間前でも予約が取れることがある」となっている。
ところが、相手に21日と勘違いされるくらい、
要は非常に簡単に予約が取れたのだった。
予約番号を教えてもらい、当日は予約の30分前に
窓口に行く。
こんな簡単な手続きを代行して高い手数料を取ってる
業者がいるなんて信じられない。
うちは6人分だから、さしづめ3万円くらい得したかな、と話した。

さて、見学当日。
「最後の晩餐」のあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会に向かう。



三々五々集まってくる見学者は日本人だらけ。
もちろん他の国の人もいるのだけど、なんか目立つ。
チケット売り場で問題発覚。
なんと現金でしか払えません。
クレジットカードはダメ。
一人6.5ユーロ、「最後の晩餐」を見に行く方は
事前にお金を下ろすのを忘れないように。
ちなみに我が家は光(2ヶ月)の分まで取られました。
事前に子供の年齢なんか聞かれなかったし、
たいした金額じゃないのでいいけど。
余談だが、チケットの裏は「最後の晩餐」の部分。
チケットによってその部分が違う。
揃えばパズルの要領で絵になる。
うちは6枚あったのでほぼ完成品になった。
(あと一枚あれば完璧だったのだが)

我が家の「最後の晩餐」(部分)


チケット売り場の隣が待合室。
順番が来るまでそこで待つ。
壁には「最後の晩餐」の解説や、
教会の歴史などが書かれている。
待ってるとやがて順番がやってきた。

チケットを確認した後、同じ予約時間のグループが
教会の廊下とおぼしき場所に出る。
一グループ30人ほどか。
廊下はガラス張りになって中庭が見える。
すると後ろでドアが閉まる。
次のドアが開く。
グループが移動する。
後ろでドアが閉まる。
と、ヨーロッパの銀行などにあるのと同じような、
二重の入り口構造。
これがなんと5つもある。
ものすごい厳戒態勢だ。

ようやく「最後の晩餐」のある部屋に入れてもらえる。
部屋の照明は落としてあって、
「最後の晩餐」および反対側の壁にあるキリストの処刑の絵(ダ・ヴィンチではない)にだけ
照明が当てられている。
見学時間は20~30分くらい。
部屋に入ってからは「出ろ」と言われるまで自由に見学できるが、
絵の前には柵があって近くまでは寄れない。
(もっともけっこう大きな絵なので、
あまり近寄ってはかえって見にくいが)
もとは食堂だったと聞いているが、
壁の上部には当時のものとおぼしき壁の模様が残っていた。
(この教会は空襲で一度大破している。
しかし驚いたことに「最後の晩餐」は事前に
壊れないようにガードしてあったので無事だったそうだ。
ガードといっても、足場のようなもので支えてあっただけ。
こんなのでよく壊れなかったなあ)
「最後の晩餐」は出入り口の上にあった絵のようで、
今はその出入り口の部分は塗り込められている。
絵を見たい人があまりに多いから、
きっと絵を見るためだけの場所にしてしまったのだろうけど、
私は当時のままで見てみたいと思った。
せめて食堂を再現してくれたらいいのに。
こうやって半分美術館みたいにしてみるのと、
食堂の一壁画として見るのと、
だいぶ印象は違うんじゃないだろうか。
食事しながら見るとどんな気持ちがするんだろう。

時間が過ぎて外に出される。
一部屋置いてミュージアムショップがある。
実はこのミュージアムショップは外から簡単に入れる。
入り口は五重構造(チケット売り場と待合室も入れれば七重構造だ)に比べ、
出口はわずか二重。
ミュージアムショップの係員はおしゃべりしながら、
お菓子を食べながらでヒマそう。
これなら簡単にその目をかいくぐることができそうだ。
出口から入ってくる人は不審者ではあるが、
こういうところから入ってくるのは、
ただで見たいという貧乏性ではなくて、
絵に何らかの危害を加えようと思うような不埒な輩ではないか?
このなんだか抜けた厳重さにちょっと不安を覚えた。