ヴェルディゆかりのカフェ

ジェノバについて知っていることといえば、
イタリアの三大工業都市ミラノ、トリノ、ジェノバだとか、
チュニジアに行ったとき、スタッフの一人がジェノバ出身で、
ジェノバいいよ~と言っていたこととか、
そんなことくらい。
だから、だんだんジェノバの港が見えてきたとき、
その巨大さに驚いた。
港というと漁港しか想像していなかったのだが、
工業都市だから、大きな埠頭があったりする。
車を運ぶような貨物船もあった。
それなのに、町にはシュロの木のような南国調の木が植わっていて、
ニースと景色が似ている。
位置的にはニースと同じなんだけど、
イタリアの中では北のほうにあるというイメージがあるからか、
なんだか変な感じ。

イタリア土産にパスタを買っていこうとホテルのフロントで聞いたら、
なんと近くのスーパーを紹介された。
その名もCOOP。イタリアにも生協があるのか?
確かにパスタ売り場のでかさには驚いたが…。
(歩いても歩いてもパスタばっかり)
スーパーの隣のカフェでお茶を飲んでいたら、
すぐ近くでおじいさんが犬にかまれたりして、
けっこうスリリングな体験をしてしまう。

ふらふらと歩いているうちに噴水のある大きな広場に着く。
周りは銀行ばかり。
どれも大きくて立派な建物。
まるで丸の内にでもいるみたい。
でもすぐ近くに劇場もあって、
その向うにはイタリアの山々が見える。



昼食時だったので、どこかでごはんを食べようと探すが、
昼になると店という店がいっせいにシャッターを閉めてしまう。
ゴーストタウンに早変わり。
心なしか日差しまでかげったような気がしてしまう。
フランスでも昼間店を閉めるところはあるが、
ここまで揃って閉めてはいない。
でもいくらなんでもレストランくらいは開いているだろうと思うのだが、
そういうときに限って見つからない。
旧市街に近かったので、おなかをすかせながら散策。
旧市街はさすがに少しは賑わいを見せていたが、
狭くて薄暗くてちょっと怖い。
歩いているうちに小さな広場に。
黒白の縞模様の教会。
よく見ると周りの建物も黒白。
こういうのをジェノバ様式と言うそうだ。



ジェノバではいわゆる観光をまったくしなかったので、
名所旧跡を目指して歩くことはなかったが、
たまたまこの広場に出くわしたのはラッキーというしかない。

「そういえばヴェルディ(※)の通ったカフェがあるらしい」
それを探して行ったり来たり。
ルッコーリ通りに来て目の前にあったカフェがそれだった。

klainguti(クライングティ)。
創業1828年らしい。


食事をしたいと言うと二階に通される。
もっとゴージャスなカフェを想像していたが、
これまた場末の食堂レベル。
おじさんがやってきて「スパゲッティかペンネで、
トマトソースかラグー(ミートソース)」と英語で言う。
ええ~、それしかないの?
でも横のサイドテーブルにはいかにも肉魚の付け合せっぽい
野菜が並んでいるんですけど。
でもおじさんがそう言うからとりあえずそれを頼む。
あ~あ、日本人はトマトかミートソースのスパゲッティしか
食べないと思ってるのかなあ。
せっかくジェノバに来たのにジェノベーゼソースのパスタはないのかよ、と
グレた私がふと横を見ると、
隣のテーブルのおじさんが見るからにジェノベーゼソースって色をした
パスタを食べてるじゃないか!
なんだ、あるんじゃん。あれ食べたい。
おじさんが来たときにすかさず言った。
OKとすぐ持ってきてくれた。

実は今までジェノベーゼソースってあんまり好きじゃなかった。
バジリコがこれでもかってくらい主張しているし、
なんだかすごくこってりしているし…。
でもここで食べたジェノベーゼはそんなに青臭くなく、
また油も少なくあっさりしていた。
これだったら食べられる!

ダンナ曰く「おじさんが英語で言えるのはあれだけだったんじゃない?」
決して日本人だからと小馬鹿にされたわけではないようだった。
事実、パスタを食べ終わった頃にまたやってきて、
「肉か魚を食べるかい?」と聞いてくれた。
もうおなかいっぱいだったので断ったけど。
代わりにケーキを頼む。
見てもわからないから見た目だけで選んだが、
私の選んだアーモンド風味のケーキは
かなりお酒が効いている。
ダンナが頼んだケーキも同様。
ヴェルディはこのお酒たっぷりのケーキを食べて、
ほろ酔い加減になったところで作曲していたのだろうか。

(※)ヴェルディ…イタリアの超有名作曲家。
オペラが有名。オペラを聴かない人でも
「アイーダ」「椿姫」という名前はご存知でしょう。