芸術の都その1「美術」

ウィーンといえばクリムト。
…あとは?


王宮宝物館(王宮)
国立図書館(王宮)
熱帯蝶類博物館(王宮)




…王宮に行ったのですが、
皇帝の部屋は見てません。
子供が建物を見ただけで飽きそうだったので、
とにかく子供の興味を引きそうなものを選びました。
で、見た目の派手さで宝物館。
たしかにハプスブルク家の当時の栄華がしのばれるような
ものすごく大きな宝石が所狭しとついた
王冠とか十字架入れ。
(これでもかってくらいについているので、
はっきり言ってセンスはよくない。
せっかくの宝石も「これ、本物?」って感じに見えてもったいない↓)



私が「おおお!」と思ったのは、
皇帝の衣装。
特にマント類は半円形の布に一面の刺繍。
その柄がちょっと中国っぽいっていうのかな、
ダンナが言うには「マジャールの文化が入ってるから」だそうだが。
そんなマントが何種類も何種類もあるのです。
しまいには教会の天井画に描かれていそうな、
キリストの生涯がマントに描かれていたりして、
もちろんそれも刺繍。
ため息が出ました。
あと印象的だったのは、キリスト教関係のものが多かったこと。
十字架も大理石やクリスタルガラス、陶器で作られたものまでありました。
(陶器の十字架なんて、さすがウィーン!と思ったよ)
もちろん聖人像も各種素材であります。
ハプスブルク家の人ってけっこう敬虔だったんだ…。
なんだか豪奢なイメージがあったけれど、
実は堅実だったのかも、なんて思いました。

さて、国立図書館。
天井が吹き抜けになっていて、
大きな本棚に所狭しと本が並べられています。
大理石の一本柱が天井を支えていて、
その柱の中をくりぬいて二階に上がる階段になっているのです。
著名音楽家の直筆楽譜があるというので、
もしかしてマーラーか??と色めきたちましたが、
残念ながらお目にかかれませんでした。
けっこう混んでいた宝物館とうって変わって、
こちらは人も少なくゆったりしています。
書架の本を手に取ることができないので、
一部展示されている本を見る以外は
内装を見たり、古い地球儀を見るくらいなんだけど、
そういうのってやっぱりあまり興味がないのかな。

昔の楽譜?
挿絵がとてもきれい。
写真を撮ったら怒られた。


次は熱帯蝶類博物館。



よくある蝶の温室(規模もそんなに大きくない)ですが、
子供にはちょうどいい息抜きになりました。
中の一角ではいろんな蝶の人工羽化をしています。
さなぎが一面に並べられていて、
その横で今羽化したばかりという感じの
羽がよれよれの蝶が休んでいるのです。
(人工羽化ができるのなら、きっと人工孵化もしてるんだろう)



外にはお決まりのミュージアムショップ(おみやげ屋って感じだった)。
でもその後、オーストリアというと蝶のマークがよく目についたので、
もしかしたらけっこう蝶で有名なのかも…。

美術史美術館



さて、本命その1。
マリア・テレジアの銅像が前に建っています。
夕方であまり見学の時間がなかったため、
絵画ギャラリーに絞ります。
実は我が家がウィーンに行くほんの数日前に
ここの有名な彫刻が盗まれてしまったのです。
館内ガイドにもその彫刻の写真が載っていたくらいなので、
相当な目玉なのでしょう。
もっとも私はあまり興味なかったけど。

ゆりちゃんが音声ガイドを借りたいと言うので
聞いてみたらなんと英語、ドイツ語、そしてイタリア語しか
ありません。
なぜフランス語がないの!!
わからない言葉で聞いてもしょうがないので
あきらめました。
(親としてはちょっとホッ。
音声ガイドがあるとなかなか先に進めないのです)

絵画ギャラリーはすぐにラファエロがあったりしましたが、
いまいち感動は薄い。
けっこういい絵だったんですけどね。
メインの展示室の横に小さい展示室があって、
一筆書きのように見て回れません。
いちいち行ったり来たりしなければならなくてめんどくさい。
それで、時間のあるほうがサイドの展示室を
先に見て回って、見どころがあれば相方に知らせる、という
方法をとりました。
これがあとで命取りになるのですが…。

ブリューゲルがあるというので、探してゆきます。
途中ルーベンスの部屋なんてのもあったけど、素通り。
「フランダースの犬」のネロが見たら怒りまくるでしょう。
ある部屋に一足踏み込んだら、ああ、ブリューゲルの部屋!!
その部屋全部ブリューゲルです。
「農民の婚礼」「バベルの塔」「冬の狩人」「農民の踊り」その他、
ウィーンでこんなにブリューゲルが見られるなんて
予想だにしていませんでした。
ブリューゲルは好きで、日本で展覧会があると
よく見に行っていたのです。

そこで満足してしまったのが間違いでした。
ダンナがサイドの展示室を見て回って、
「らんちゃんみたいな女の子を毎年描いてる絵がある」と言うので、
へえ、かわいいなあと思ったけど、
もう疲れていたので私は見に行かなかったのです。
ところが、あとで買ったガイドを見たら、
な、なんとそれってベラスケスじゃん!!!
しかも「王女マルガリータ」!!!
「どうしてあのときにベラスケスだって言ってくれなかったの!!!」
「だって言ったじゃん、女の子の絵があるって」
そんなんじゃベラスケスか分からんよー。

中にカフェレストランがあったので、
そこで何か飲もうかと思いましたが、
その日はたまたま夕食ビュッフェの日で、
これは事前予約しないと入れないそうです。
もうこのビュッフェのためにわざわざ来ましたって感じの
着飾った人(男女問わず)が続々と集まってきていて、
なんだか様子が変だなと思っていましたが、
まさか美術館の中でディナーとは。

でも入ってすぐの吹き抜けはこんな感じ。
王宮にも負けず劣らずだ。


アルベルティーナ(王宮)

ホテルへの帰り道、ムンクの「叫び」のポスターが貼ってありました。
どうやらアルベルティーナというところでやっているらしい。
でも旅行ガイドには出ていません。
これはいったいどこなのか?
探しているうちにパンフレットを発見。
王宮の一角の美術館でした。
そこで「ムンク展」をやっていたのです。



この展覧会は非常にユニークで、
テーマが「Theme and Variation」、
ムンクは一つの画題について下絵や習作を含めて
何枚も描いているのですが、
それを集めて展示していたのです。
当初の下書き状態から、だんだん絵になっていく過程が
並べられている絵を見ているだけでよく分かります。
時には、だんだん対象物の形が変わってきたりして。
最初の頃はムンクも普通の絵を描いていたようですが、
だんだん見ているだけで気持ち悪くなるような、
居心地の悪い例の感じに変わってきます。
きわめつけはやはり「叫び」、
でもダンナは「教科書に出てるヤツと違う」と言うのですが…。
確かに色とかちょっと違うかもしれません。
これだけたくさん描いている人だから、
「叫び」も何枚もあるのかも。
ほとんどがオスロのムンク美術館から来ていました。
最後に彼の年表を見ましたが、
絵から受けるイメージと違い、
彼は早くから画家として成功したようでした。
家族を早くに亡くして家庭には恵まれなかったのですが、
仕事には恵まれたようです。
この世界では珍しいことですよね。
きっと時代の雰囲気に合っていたのでしょう。

クンストハウスウィーン

ドナウ川クルーズで行き着いた先がクンストハウスウィーン。
いかにもヨーロッパな整然とした町並みの中に
突然現れる奇妙な建物です。



フンデルト・ヴァッサーという画家の作品を展示していますが、
この建物自体も彼が作ったものということ。
最初ダンナが「これ、子供の絵みたいだよ」と言ったくらい、
ちょっと稚拙ともいえる絵が並んでいるのですが、
これが威力を発揮するのは切手になったとき。
ものすごくきれいです。
それを見ると、元の原画がよく見えてくるから不思議。
絵のほかにもこの建物を手がけているように、
住宅やゴミ処理場のデザインもしています。
建物のデザインはこれくらい奇抜な方がおもしろいです。
特にゴミ処理場なんて、イメージがガラガラと変わります。
中にカフェがあるのですが、
一面に花が飾られていて上から見てもきれいです。



オーストリアギャラリー



本命その2。
クリムトを見に行きます。
ベルヴェデーレ宮殿の中にオーストリアギャラリーを含め、
いくつかの美術館があります。
フィレンツェもこういう宮殿の中に美術館があったなあ。
やっぱり時の権力者は絵画収集に走るのかしら。
ベルヴェデーレは広い庭の中にあって、
その庭だけでも一見の価値がありそうでしたが、
この日もブダペストに行く電車に時間があったので、
オーストリアギャラリーに絞ります。
こちらは美術史美術館と違って、
わりと簡単にクリムトの部屋が見つかりました。
クリムトの絵は一つ一つが大きい。
「接吻」、素敵でした。
当たり前だけど、今まで見慣れた
印象派とかとまるで画風が違うんですね。
こういうのが家に一枚欲しいなあ。
「ユーディット」は残念ながら見られず。
貸し出し中だったのかしらん…?
次はエゴン・シーレの部屋。
「死と乙女」は写真などでも見たことがなかったので、
初めての対面です。
訴えるものが非常に強い絵。
館内が比較的空いていたこともあって
じっくりと見ることができました。

ベルヴェデーレ宮殿の周辺には
マーラーの家なんかもあったそうで、
もっと時間があればゆっくり見て回りたかったです。
それにしても、満足度の高い美術館めぐりでした。