誕生会

ゆりちゃんも何度かお友達の誕生会に呼ばれたが、
ついにゆりちゃん自身の誕生会を開く季節になった。
日本でもやったことがないのに、
フランス人の子供を呼んで果たして何とかなるのか?
親の不安をよそに子供はその日を指折り数えて待っていた。
馨も誕生日が一週間違いなので、
まとめていっしょにやることにする。

まず誕生会をいつやるか?
平日は幼稚園が午後4時半まであるし、
共働きの家が多いので無理。
幼稚園が休みの水曜日という手もあるが、
やはり共働き家庭の子供は呼びにくい。
となると、どうしても土曜日に集中しやすい。
次の日が休みだから呼ぶ方も気が楽なのだろう。
うちも最初そのつもりだった。
しかし、ある日幼稚園に行ったら
もーふぃーぬから誕生会の招待状。
うちがやろうと思っていたその日と重なってしまった。
こういうのは招待状を出したもの勝ちだ。
しょうがないので一日ずらして、次の日の日曜日に開くことにした。
ゆりちゃんが一番呼びたいもーふぃーぬの都合を聞き、
彼女が来られることをきちんと確認した上で…。

だいたい誕生会の2週間前には招待状を配らなくてはならない。
近所の文房具屋で一番デザインがかわいくて、
かつ書く部分が少なそうなのを選ぶ。
たいていの招待状は手書き、パソコンの違いこそあれ、
みんな全文自筆なのだが、
外国人の我が家はそんなええカッコしいはできない!
日時と住所電話を入れる。
さてここで一つ難問。
封筒に招待する子供の名前を書き、
幼稚園で先生に渡してもらうのだが、
呼びたい子供の名前のスペリングがわからない!
以前誕生会に呼ばれた子の場合は
招待状を全部とってあるので、それを見て書いたが、
そうでない子の場合は難しい。
典型的フランス人の名前なら辞書にも出ているが、
アラブ系の子供とおぼしき名前はもうお手上げ。
ゆりちゃんに記憶をたどってもらいながら書く。
まあゆりちゃんの名前のつづりもたいてい間違っているので、
ここはお互い様ということで勘弁してもらおう。

招待状を渡すとコンファメーションの電話が来る来る!
短期間にこんなにフランス語の電話をとったのは初めてだ。
日本語でもそうだが、初めての家に電話をかけ、
しかも招待ありがとうと社交辞令から始まる電話、
けっこう形式的で何を言っているんだか分からない。
肝心の「来る・来ない」を聞き間違えないようにするのがせいいっぱい。
意外と幼稚園で声をかけられることも多かった。
私なんか、招待された相手の子供はもちろん、
親の顔すら見分けがつかなかったけど、
やっぱりアジア人は物珍しいので、
すぐにわかってしまうのね。

あとは当日の準備。
週末買出しのたびにちょこちょこと買い揃えてはいたけれど、
結局前日、ゆりちゃんがもーふぃーぬの誕生会に行っているときに
大車輪で買い集めた。
午後おやつ時の誕生会なので、
用意するものはおやつばかりでちょっと楽。
お祝いのケーキは前日に焼いておく。
本当はスポンジケーキに生クリーム、というのにしたかったが、
実力が伴わず、次善策のりんごのタルトとレモンのタルト。

いよいよその日がやってきた。
朝から掃除、ガーデンパーティーにしたので庭のテーブルの準備。
ダンナは風船を膨らます係。
家の門にも風船をつけて来る人の目印にする。



家のドアなどにも風船を飾る。
「お誕生日おめでとう」とフランス語で書かれた
長細い風船は子供がおもちゃにしてしまい、
5本あったうちの2本が割れてしまう。
それは庭のテーブルの上に飾る。
時間がどんどん過ぎる。
テーブルに紙コップ、紙皿、プラスティックのフォーク、紙ナプキン。
お皿にポテトチップスなどの塩味のお菓子と
チョコ味のビスケットなどの甘いお菓子を所狭しと並べる。
飲み物は水(ガスあり、なし)、ジュース(オレンジ、りんご)、
コーラ、レモネード、アイスティー。
フランス人の子どもが何を好むのかよく分からないので、
思いつくものを用意してみた。

時間になり、子供たちが次々にやってくる。
今日はオープンハウスにしたので、土足OK、
子供たちは一体何に興味を示すのかな?
それはテラスに出しっぱなしだったビニールプール。
水遊びする予定はなかったのだけど、
そこにあった水鉄砲でずいぶん時間がつぶれる。
またプールにみんなにお土産を渡すための
釣りゲームを作っておいたのだけど、
それもだいぶ喜ばれていた。
急場しのぎで作ったものだけど、おもしろかったのかなあ。
誕生会をやるちょっと前にもーふぃーぬやたんぴんが
うちに遊びに来たことがあったのでわかっていたが、
フランスの子供は遠慮というものがない。
家中どこでも入っていく。
はっと気づくと1階(日本式の2階)の洗面所から手をふっているあえら(Aela)。
すでに勝手知ったるもーふぃーぬ(Maureen)は
他の子を連れて家中を回ってるぞ。

のえみ(Noemi)がまだ来ていなかったが、
もう30分も時間が過ぎていたので、
ケーキを用意していたところにのえみが来た。
ろうそくと花火をセットしてさあ始めるよーと子供たちを呼ぶが、
集まらなーい。
しょうがないのでだいたい揃ったところで勝手に始める。



一応形だけおめでとうをしたあとは無礼講。
みんな好き勝手に遊ぶ。
サッカーゲームを見つけてやりたいんだけど、
すぐにやり方が分からなくなり、
しかもそこであきらめずに何度もダンナにやり方を聞くほばん(Robin)。
彼はずっとゲームの前にいたぞ。
そのうち誰からともなくビデオを見たいと言い出し、
みんなビデオの前に集結。
いいのか悪いのかわからないが、
親としては楽な展開になった。
ゆりちゃんはプレゼントを開け始め、
今度はそのプレゼントでみんな遊ぶ。
どこの誕生会でもそうなるようだ。
プレゼントってもらった本人があとでこっそり一人でほくそえむものではないらしい。
たんぴんがパパに怒られて外出禁止になったそうで、
馨のまかまで来たのはいねっと(Ines)一人。
年長組のお友達に囲まれて最初はもぞもぞしていたが、
終わり近くになってようやく本領発揮?
唯一日本人で来てくれたみずきちゃんといっしょに遊ぶ。
耳元でゴニョゴニョ言ってると思ったら、
「あのね、飴が欲しいの」。
そして、帰る間際なのに水遊びでびしょびしょ、
そしてなぜかドロドロ…。
お迎えに来たパパに平謝りだった。

あっという間にお迎えタイムになり、
例の釣りゲームをやっているヒマはなく、
帰る子供たちにお土産を手渡し。
(中身は男の子セット:ミニカー、風船、チョコレート。
女の子セット:おもちゃのネックレスとブレスレットのセット、
風船、チョコレートは同じ)
最後のお友達も帰り、
子供たちのわけ分からないフランス語の応対をしてくれた
じゅぬびえーぶさんとみずきちゃんも帰る。
あ~終わった~。
思わずため息。

振り返ってみるに、
ケーキもお菓子も思ったほどたくさんは食べない。
人気があったのはポテトチップス、チョコクリームをはさんだクッキー、
そして意外にキャンディー。
飲み物も一番出たのが水だった。