日本語教育

フランス語も心配だが、同じくらい心配なのが日本語。
日本の同年齢の友達の話を聞くとどうも日本語が遅れているような気がする。
環境が違うし、小学校にあがるまでに少なくともひらがなが読めればいいか、と
楽観的に考えていた。

日本を出発した当時4歳だったゆりちゃんは
自分の名前とパパ、ママ、品
(多分我が家の車が品川ナンバーだったからだと思うが)
だけ書くことができた。
その後かおる、らんと弟妹の名前までは書けるようになったが、
それ止まり。
読むほうも同レベル。
やはり毎日幼稚園で教わるアルファベットの方がなじみ深いし、
だいたい書くのも楽。数も少ない。
ゆりちゃんは圧倒的にアルファベットを書くほうが多くなった。
ひらがな帳などは日本から送ってもらったり、
子供たちも本屋さんで欲しがるので時々買っていたが、
字を覚えるというよりお絵かきの延長という感じ。
もうちょっと「お勉強」させないとダメかな、
でも無理強いして嫌いになっても困るし、と
ちょっとジレンマに陥っていた。

ところが。

あっけなくこの問題は解決したのだ。
もともとドラえもんが好きな子供たち、
ドラえもんのビデオをもらって気に入って見ていて、
もっと他のも見たくなってレンタルビデオで借りた。
そのとき借りたうちの一本が
「ドラえもんのひらがなの読み方」だったのだ。
ドラえもんのキャラクターが出てくること以外は
どこにでもあるような教育ビデオ。
しかし「ドラえもん」というだけでつぼにはまった。
2週間で2本のひらがなビデオを借りた。
これだけで50音読めるようになったのだ!
(2002年2月、ゆりちゃん5歳8ヶ月のこと)

そのときは50音表のように順番に並んでいないと
読めないかな~と思っていた。
しかし、その後絵本のタイトルなどを読ませてみると、
多少読めない字はあるものの、ほとんど読める。
ちょうどタイミングがあったのだろうか。

ちなみにドラえもんのビデオは
比較的日本語がしっかりしていると思うので、
日本語に触れるいい機会かなと思っている。

ひらがなを覚え始めた過程で興味深いこと。
ゆりちゃんの音節に関する観念の違いだ。
日本語の場合、たとえばドラえもんなら
「ど・ら・え・も・ん」と一音ずつ別のものという認識があるが、
ゆりちゃんの場合
「どらえ・もん」と2音節でとらえている。
「どらえ」も正確には「どぅらえ」という感じで、
子音の連続をひとかたまりにとらえている。
これってやっぱりフランス語感覚なのかな?
文字を見て読ませると日本語的に読めるが。

文字としての日本語は教科書で覚えられるが、
日本語の意味、用法や文化は実際に生活の中で使わないと
なかなか覚えられないだろう。
ゆりちゃんは幼稚園で
「bonne anneeボナネを日本語でなんと言うの?」と聞かれて
答えられなかった。
答えは「明けましておめでとう」。
日本語の対応する言葉が分からなかったのだろう。
日本にいれば当たり前に覚えていくような事柄も、
海外に生活している場合は「教える事柄」になってしまう。
しかし機会あるごとに教えていかないと、
その部分がすっかり抜け落ちた日本人になってしまうだろう。
文化を教えるのは文字を教えるより難しい。

ひらがなをドラえもんで覚えたゆりちゃん、
次はカタカナもまたまたドラえもんビデオで学習中。
ついにはビデオをアマゾンドットコムで取り寄せました…。
こちらも順調で、読みのほうはある程度できるようす。
書くほうはあまりしないかな?
さて驚いたのは、いつの間にかひらがななら、
自分の書きたいことを書けるようになっていたこと。
最初はもちろん見ながら真似して書いていたのだが、
そのうち見ないで書きたいと思ったことを書き散らすようになった。
もちろん、のばす音とか小さい「つ」はまだできない。
でもそんなの、小学校に入ってからだって遅くない。
そのわりには「「がっこうへいく」の「え」は「へ」って書くんでしょ?」
「「ゆりちゃんは」の「わ」は「は」って書くんでしょ?」と
難しいことを知っている。
どうしてそんな難しいことを知ってるの?と聞いたら、
「ドラえもんのマンガの中に出てきた」のだそうだ。
マンガは字を覚えないからダメとずっと言い続けていたのだけど、
ここに来てやっと効果が出てきたか?(2002年7月8日)