最後の面談

園長先生との二度目の面談をした。
去年11月に一度目の面談をした際(「しゃべらない」を参照のこと)に
年明けにもう一度面談をするということになっていたし、
2月頃に成績表をもらってきて(「成績表」を参照のこと)、
しゃべる分野だけが評価が悪かったので、
このままで小学校に上がれるのかも知りたかった。
当初成績表をもらってすぐに予約を取っていたのだけど、
前日になって担任の先生から園長病気で予約延期を知らされた。
敵前逃亡か?とちょっとほくそえんだのだが…(私って意地悪だ)。

一ヵ月後、面談の再予約をし、その日がやってきた。
園長先生とゆりちゃんの担任が同席。
まずゆりちゃんの幼稚園でのフランス語の様子を聞いたが、
「ゆりはしゃべらない」
「しゃべろうという気がない」と、
前回の面談とまるで同じ回答。
続けてこのままで小学校にあがれるのかという話になって、
「幼稚園にこのまま置いておく気はない。
しかし現地小学校でやっていくのは難しいだろう」
だから
「インターナショナルスクールか日本人学校に行ったほうが
いいのではないか」
ということだった。
ここでいうインターナショナルスクールは
サンジェルマンアンレーにあるフランス国立のインターナショナルスクールのこと。
通常の授業はフランスの学校なのでフランス語、
週に数時間、母国語別のセクションに分かれて、
日本でいう国語や自国の文化を学ぶらしい。
日仏バイリンガルを目指すにはすごくいい学校に見えるが、
ゆりちゃんは車で通うのがイヤなのと、
今のお友達と離れたくないというので、
この学校は選択肢からはずしたのだ。

我が家がどうして現地校を選んだのか、
先生たちには理解できないようだった。
ずっとフランスで暮らすわけでもないのに、と。
もし数年ごとにいろんな国を渡り歩くのならば、
むしろ英語の学校(ブリティッシュスクールやアメリカンスクール)に
入れたほうが親も英語を話すのだし、
同じ言語で統一できていいんじゃないの?とまで言った。
我が家はせっかく海外に来たのだから、
現地の子供たちと同じような生活をさせたい、
近所に現地のお友達を作ってあげたいと願って
現地校に入れたのだけど、
説明してもわかってもらえないだろうし、
分かってもらう必要もないと思って言わなかった。

結論として、小学校へは上がれるということだった。
ただし本人がすごく苦労するだろうという前提のもとで。
てっきり「もう一度年長をやったほうがいいのでは」と言われると思っていた私は
ちょっと拍子抜けした。
それと同時に突き放された感じもした。
どうも先生が恐いらしいゆりちゃんは、
きっと年長をもう一度やっても恐いと思っている限りは
幼稚園でしゃべるようになんかならないとは思っていた。
小学校で本格的に読み方書き方などを習うと聞いていたので、
思い切って上がった方がきちんと教わることができて
かえって覚えられるかもと思っていたからだ。

小学校に上がるのに一番問題とされていたのは、
文章でフランス語をしゃべらないということだった。
確かに成績表の項目に「過去、現在、未来形を使い分けられるか」
なんていうのまであって、
親もできないのに子供ができるわけないじゃん、と思っていたが。
ただ、以前は簡単な文章でも教えようとすると
「わからないからいい」という感じで拒否されたが、
最近は担任の先生に昨日あったことを話したいなどと
話すことに前向きになりつつあった。
最低限必要な単語はもちろん、
簡単な文章も教えると一生懸命暗唱していた。
そのことは伝えた。
「本人は今しゃべりたいという気持ちになっている」と。

しかし極めつけは園長先生の一言。
「普通は一年もすればしゃべるようになるんだけど」だった。
何をもって普通と言っているのか?
大体園長先生は幼児外国語教育の専門家ではない。
子供の性格、外国語環境に入った年齢、兄弟の有無など、
一筋縄ではいかない要素が複雑にからみあっていることくらい、
素人の私だって知っているのに。
それにゆりちゃんは誰ともフランス語をしゃべらないわけではない。
隣の家のおじさんおばさん、マリーナ、
給食のおばさん、centre de loisirsの先生などとは
ちゃんと話すのだ。
もちろん挨拶や片言の単語が多いけど、
「話したくない」というのは先生の偏見なのは確かだ。
それを考えると、幼稚園で何らかの
話したくなくなる事件があったのではないかと思う。
いったん萎縮してしまったら、
解消するのにすごく時間がかかるだろう。
もしかしたらずっと解消しないかもしれない。
園長先生、担任の先生、こういう風にしちゃったのはあなたじゃないの?
先生の子供に対する態度、先生との相性も
子供の成長に影響するのではないの?

先生を含めて環境がガラッと変わる小学校に
期待したいと思った。
何が原因なのかわからないのだから、
どこの学校に行ってもリスクは同じだと思った。
それならゆりちゃんが望むとおり、
友達がいる現地小学校に入れてあげようと思った。
その代わり親ができる限りのフォローをして。

面談が終わり、たまたま幼稚園に来ていた馨の担任(ジャバ)に
馨の様子も聞くことができた。
ジャバは馨のことを
「しゃべるフランス語はボンジュールやフランソワーズ(先生の名前)、あと
○○や△△くらいだけど、
お絵かきなどの作業はよくやってるし、平気ですよ」
と言っていた。
園長先生は
「馨はまだ年少だし、3年間あるから状況が違うわね」
のようなことを言い、ゆりちゃんのことを
「難しい子供だ」と言った。
そんなことないのよ、園長先生。
難しくしてしまったのはあなたなのよ。
ゆりちゃんは素直な記憶力のいい子です。
あなたの知らないところでたくさんフランス語を覚えて、
家ではたくさんしゃべってる。
どうして幼稚園では出てこないのか、
自分の胸に手をあてて考えてほしい。
全ての子供が扱いやすい子供のわけがない。