意外な面談

あと少しで夏休みという、6月半ば、
馨が手紙を持って帰ってきた。
再教育指導の先生との面談通知だった。
私はこの再教育指導の先生が大嫌い。
一度面談したことがあったが、
子供たちのフランス語に関しての提案といえば、
抽象的なことばかりで、全然参考にならない。
二言目には「家庭教師をつけろ」。
リセ・アンテルナショナルの日本語セクションに
水曜日だけ参加しろと提案してくれたものの、
問い合わせてみたら水曜日は日本語の授業の日で、
フランス語は勉強できなかったのに、
それすら知らなかったしょうがないやつなのだ。
馨のクラスに週一回来ていたので、
それ以降もたびたび顔を合わせることがあったが、
会うたびに「家庭教師はつけたか?」
つけていないと答えると、
「どうしてつけないの?理解できないわ」
子供相手、しかも未就学児を教えてくれる家庭教師を
探すのはとても困難だったのだが、
そんなことを言っても分かってくれない。
だからcentre de loisirsに入れたんじゃないか。
3月頃にももう一度面談しましょうと言われていたけれど、
私は会いたくなかったので連絡を怠っていた。
だから、相手がしびれを切らして連絡してきたのかと思った。

この話をナタリーにすると、意外にもその先生を知っていると言う。
ナタリーは末娘のミカエラがじっとしていないということで
呼び出しを食らったことがあるのだそうだ。
子供の教育に関して決めるのは親だから、
納得いかなければ「non」と言いなさい、
そして園長先生に相談しなさい、とアドバイスされる。
…ごめんね、ナタリー。
私は園長ともうまくいっていないのよ~。
とても園長には言えないわ~と心の中で思う。

たんぴんも同じ手紙をもらっていたのを目撃。
たんぴんのママにもぶーたれてみる。
たんぴんは1月生まれでクラスでは大きめ、
ママの話では幼稚園は二年め(?と言っているようだった、
年少クラスを二回やっているのか、
早生まれの子はプレ幼稚園があるのでそれに行っていたのか、
ちょっとその辺は理解できなかったが)なのに、
うまくいっていないとかいう理由で呼び出されたのだそう。
うちはフランス語が問題で呼び出されていたので、
てっきりフランス語ができない子や、
フランス人でもどもってしまうとか言葉上の問題のある子を
対象にしているのかと思ったけれど、
「再教育」という名前のとおり、
簡単に言えば教育上問題のある子は全部ひっくるめて
面倒を見ているらしい。

ダンナには「あんたとは話すことは何もない」と言って帰ってこいと
言われていた。
私もなんと言われようと馨のフランス語は
進歩していると言い張ってこようと思って行く。

面談の部屋に通され、彼女が何か言い始める。
「馨のフランス語はすごく進歩していると思いますが」と言ってみると
「そうよ。彼のフランス語はすごく進歩している」と言うではないか!!!
あれほど気張っていたのがちょっと力が抜ける。
彼女が言うには、フランス語もしゃべるようになっているし、
お絵かきも上達しているとのこと
(やっぱり再教育指導だから、言語面だけでなく、
全体的な成長をみているらしい)。
「人の顔もほら、目や鼻や口も描いて、
それらしくなってきたでしょう?」と見せられる。
今家でやっていることを聞かれ、
週一回のcentre de loisirs、
フランス語のテレビやビデオも別に嫌がらず見ている旨話す。
夏休みの予定(週三回のcentre de loisirs、
フランス語環境のバカンスに行く)を話した後、
今後どういうことを家でやったらいいか教えてくれる。

・挿絵つきの単語の本で単語力の強化

具体的に勧められたのは
・La nouvelle imagerie de l'enfant(写真)
・l'imagerie de l'eveil
・l'imagrie des animaux
・l'imagerie de la ferme
・l'imagerie du corps humain
すべてEditions Fleurus社。

  

馨に限らずゆりちゃんにも有効。
その単語を日本語でなんと言うのか、
両方教えてあげるように言われる。
母国語の上に外国語が成り立つから…とのこと。

・練習問題

cahiers d'execises
こちらもEditions Fleurus社。
(いろいろな書店で探したが、言われたものは見つからず、
今は夏休みの家庭学習用にたくさんの練習問題が出ているので、
同業他社のものを買わせていただきました。どれもいっしょだと思うよ)

こんな感じ↓


・音声付の絵本で耳慣らし

音声はカセット、CD、ビデオ、DVDなどいろいろあるが、
ビデオは絵だけを見てしまう可能性があるので、
音だけのカセットやCDの方がよい。
一番いいのはDVD。
フランス語字幕が出るモードにすれば、
音声と字とを一致させることができる(特にゆりちゃんに有効)。
最近うちの住んでる町にできた新しい図書館に
この手のものがたくさん置いてあるので見てみるとよい。
(さっそくFNACで購入)

左上から時計回りに
「ピーターと狼」
「三匹のこぶた」
「三匹の熊」(邦題はこれでよかったか?トルストイの作)
「ジャックとまめの木」

ダンナは「みんな幼稚園でやったじゃん」と言っていたが、
(「ジャックとまめの木」は未読)
私は一度やった話のほうが子供たちも理解できるだろうし、
私自身も知っている名作の方が
訳すにしても読みながら想像するのもやりやすいのでよい。
日本と同様、フランスにもたくさんの創作絵本があるけれど、
語学力がついていかないので、
あんまり文章が込み入っていると何を言ってるんだか分からない。

・家では日本語を

母国語の基礎が大事だから…と強調される。


こんな具体的な指導、できるんじゃん。
だったら初めから言ってくれればいいのに。
それとも全くゼロの状態の場合、
何から手をつけていいかわからないのかしらん?
この人との面談がこんなに参考になるとは思わなかった。
家庭教師はその後どうしたか?という話になり、
見つからないと言ったら、
なんと探してくれると言う。
いや、別に探さなくってもいいんだけど、
9月からは平日の夕方もゆりちゃんのエチュードに合わせて
馨をcentre de loisirsに入れるつもりだから、と言ったが、
まあ好意だから好きにさせておく。

この先生は英語もしゃべれるので、
前回の面談は英語でやったが、
今回はオールフランス語。
先生は私のフランス語力の進歩にも驚いてくれて、
あなたはどういう勉強をしているの?と聞かれる。
今まで面談といえば、ぼこぼこにたたきのめされて
がっかりして帰ってくることばかりだったので、
この日ばかりはちょっと足取りも軽く帰ってきたのだった。
「私のやっていたことは間違っていなかったのね!」