ピーターと狼

幼稚園では毎年決まったテーマに沿っていろんな作業をする。
(子供たちは幼稚園でやるいろいろな作業をtravailトラヴァイユ=仕事と言うが、
うまい日本語が見つからない。
幼稚園でやるお絵かきやら字の練習の前段階の波線を書いたりするのを、
一体なんと言えばよいのだろう?)
今年度のテーマは前半が熊、後半が狼だった。
そういえば事前に
「家に狼を扱った絵本やビデオがあったら持ってきてください」
と言われていた。
そのとき真剣に「いやいやえん」を持っていこうか悩んだのだ。
赤いジャケツを着た狼が出てくるんですよ…。

その後「今日は何をしたの?」と聞くと、
「les trois petits cochonsレ・トロワ・プチ・クションをやった」
と言われることが続いた。
どうやら『三匹のこぶた』を読んでいるらしい。
なるほど、確かに狼が出てくるな、と思っていたが、
その後学年末に幼稚園であった狼がテーマの展覧会に行ってみたら、
その他『狼と七匹のこやぎ』『赤ずきんちゃん』『ピーターと狼』があった。
そうかー、考えてみれば、狼が出てくる話はいろいろあるんだな。

その頃はすでに『三匹のこぶた』は終わり、
『ピーターと狼』にテーマが移っていたらしい。
『ピーターと狼』はプロコフィエフが曲をつけており、
オケメン(オーケストラ団員)のはしくれである我が家では
知らないはずのない名曲。
もちろんCDも持っており、フランス語版でも購入していた。
まさか幼稚園でやっているとは知らず、
毎晩せがまれてセリフ部分を読まされていた…。
もちろんフランス語だ…。

幼稚園でも実際にその曲を聞いたりしたらしい。
そしてなんと、どの楽器がどの人物(動物)を表すのか、
それを結びつけるtravailまでやったらしい。
担任のナタリーがファゴットの吹き口を間違って教えたらしく、
オーケストラの映像を見てゆりちゃんがヘンなことを言う。
我が家であるまじき出来事!と思いっきり訂正してしまった。

そして学年末も間近のある日、
ゆりちゃんが一冊の絵本を持って帰ってきた。
それがこれ。

  

左ページに絵、右ページに一文ずつ書かれている。
どうやら、その文章を聞いて絵にしたらしい。
全文は以下。けっこう長い。

PIERRE ET LE LOUP

Pierre sort de sa maison.
Il rencontre l'oiseau puis le canard.
Le chat les rejoint et essaie d'attraper l'oiseau.
Mais le grand-pere arrive pour ramener Pierre a la maison.
Le loup sort de la foret et mange le canard.
Pierre a encore desobei mais il reussit a capturer le loup
avec sa corde magique.
Les chasseurs arrivent et veulent tuer le loup.
Tout le monde ramene le loup au village.

ピエールと狼

ピエールは家を出る。
彼は小鳥に、次にアヒルに出会う。
ネコが加わり、小鳥を捕まえようとする。
しかしおじいさんがピエールを家に連れ帰りに来る。
狼が森から出てきてアヒルを食べる。
ピエールはまた言いつけを聞かなかったが、
魔法のロープで狼を捕まえることに成功した。
猟師たちがやってきて、狼をしとめたいと願う。
みんなは狼を村に連れ帰った。
(フランス語なので、ピーターは「ピエール」に変わる)

ゆりちゃんに「読める?」と聞いたら、
なんとゆりちゃん、全部読んだ!!
ここに発音が載せられないのが残念なくらい、
フランスの子供みたいな発音だったよ!
もう私は感動してしまった。
ゆりちゃんの幼稚園生活の集大成がこれなんだ…と思った。
その後、電話をかけてきたダンナには、
ゆりちゃんは全文を暗唱してみせた。