お金がもらえる

それはある日突然降ってわいてきたのだった。

ことはベビーシッターを雇ったところから始まる。
うちが頼んでいるベビーシッター、ナタリーは
かなりしっかりした料金体系を持っている。
最初に説明を受けてもよく理解できなかったのだが、
要は我が家が個人でナタリーを雇っている形になっていて、
当然雇い主は被雇用者(ナタリー)の保険料を個人で
徴収組織に収めるようになっているらしい。
あとでお金が返ってくるから…と言うのだが、
そのへんはまだよく理解できていない。

ともかくその雇用関係を徴収組織に知らせなければならない。
URSSAFウルサフという、社会保険(Securite Socialeセキュリテソシアル)の徴収組織に
雇用後8日以内に必要書類を提出しなければならないというのだ。
その事務所がちょっと遠いところにあったので、
ベビーシッター契約も手伝ってくれたクリストファーが書類を取りに行ってくれた。
書類は2部あって、一部はURSSAFへ、もう一部はCAFカフへ送るという。
アルファベットの省略名称の氾濫で頭が変になりそうだった。

「CAFから育児の手当金をもらっているか?」クリストファーは聞いてきた。
「もらってないよ」
「もったいない!毎月何百フランずつかもらえるんだよ。
育児はお金がかかるでしょ?
絶対申請したほうがいいよ」
とは言われたものの、どうやってどこで申請するのか。
それに日本だと児童手当って収入制限があったりして、
けっこうもらえなかったりするんだよね…。
フランスだってきっとそうだろう。
第一うちは外国人だ。
…とは思ったが…

電話もうまくかけられないので、上記書類をCAFに直接持参して、
ついでに手当てのことも聞いてみることにした。
市役所で聞いたら場所はちょっと離れていたが、
なんと聞いた当日は午前中のみ窓口が開いているとのこと。
市役所前のバス停で知らないおばちゃんをひっつかまえて
このバスでCAFに行けるか聞いてみた。
親切なおばちゃんはCAFの最寄バス停でいっしょに降りてくれ、
行き方まで教えてくれた。

窓口には閉まる15分前にすべり込み。
ちょっと怖そうなおじさんが座っていたが、
とりあえず必要書類を出したあと、手当ての申請をしたい旨言ってみた。
そうしたら案外簡単に書類がもらえたじゃないか!
出すだけ出して、ダメならダメでいいじゃん、と軽い気持ちでもらってきた。

それからSecurite Socialeの番号も取れていなかったので、
しばらく書類をほったらかしておく。
「Securite Sociale申請中」で提出しちゃおうかと思っていた矢先に
ようやく番号が取れる。
やっとこさ手当ての書類を提出。

・CAFでもらった申請書
・滞在許可証のコピー
・OMI(移民局)で行った健康診断の結果書類のコピー(子供の分のみ)


するとすぐに返事が返ってきて、不足書類を送れとの指示。
窓口のおじさんは要らないと言っていたのに…と思いつつ

・戸籍謄本の翻訳

を送る。

申請書を書くときに一番頭を悩ませたのが、
フランスへの入国日。
2月が本当の入国日だが、ビザがおりてから帰ってきたのが4月。
どちらの日にするべきか…。
子供が幼稚園に通い始めた日を書く欄があったのだ。
3月から幼稚園に通っているゆりちゃんなのに、
4月を入国日にすると矛盾してしまう。
まあ3ヶ月以内の滞在はビザなしでもいいのだから、
うちは違法滞在ではないので、
ありのまま書いてみる。
あとでトラブルにならないようにもちろん書類はコピーを取った。

書類を出してしばらくしたらCAFの番号が送られてきた。
登録はされたらしい。
さて育児手当は毎月いくらになるんだろう?
その連絡はさっぱり来ない。
やっぱりもらえないんだろうか、と思っていたら、
ある日突然どかーんと振り込まれた。
一体いつまでさかのぼっているのか、
何人分なのかも分からないのだが、
これが手当てか!!!と思うくらい気前のいい額。
日本だと3ヶ月に一度まとめて振り込まれるので、
フランスでも同じシステムを取っていることが考えられるし、
いつも同じ金額がもらえるとは思えないけど、
ちょっと嬉しかった。

続いてURSSAFから来ていたものの放りっぱなしだった申告書類。
これこそが最初にナタリーから聞いていたもので、
この書類を出さないとお金が返ってこないのよ~とのこと。
慌てて書類を書き出すが、肝心の金額を書く部分が全く分からず。
ナタリーに聞いたり、直接URSSAFの事務所に電話したり。
どうにか書きあげて送ると、すぐさま返信が。
なにやら記入したナタリーへの支払い金額と預けた日数がおかしいと言っているらしい。
ナタリーには「これはURSSAFの担当者がバカよ~。
どうしてこんなことがわからないのかしらね~。
なるべく払うのを遅らせよう、遅らせようとしてるのよ。
2ヶ月で19日間と書いて送り返してやりなさい」と言われ、
何でそこが問題になっているのかよく分からなかったが、
とにかくそう書いてやり、
クリストファーのアドバイスでナタリーから毎月もらっている
請求書のコピーもつけて送り返した。
これはいくらくらいいつ返ってくるのか、まだわからない。

ここではたと気づく。
そういえばずーっと前、らんちゃんが9ヶ月の検診を受けたとき、
小児科で書類を書いてくれ、
それをCAFに送るように言われていたのだ。
調べてみると、生後3回の検診結果を
CAFに送ることで育児手当がもらえるというのだ(収入制限はあるらしい)。
当時はCAFとは何ぞや?というところから分からず、
放りっぱなし(なんでもこれだ)だったので、慌てて送ってみる。
うちがどかーんともらったほうは
家族手当
(Allocations Familialesアロカシオンファミリアル)、
子供の多い家庭にもらえる手当てだった。
CAFとは、Caisse d'Allocations Familiales(ケス ダロカシオン ファミリアル、
家族手当支給機関)の頭文字だったのだ。