フランス人の色彩感覚

こっちに来てまず思ったのは、フランス人ってみんなおしゃれをしているなということ。
オランダに住んでいたときは、みんな身なりはしっかりしていて、
悪いものを着ているわけではなかったのに、みんなどことなく
(日本人よりも)地味な感じだった。
ところがパリでは若い女の人はもちろん、
普通のおじさんが会社に行くだけでも、どことなくおしゃれな感じ。
その一番の違いは色の使い方にあると思う。
なんといっても彼ら、色がはっきりついているものが好きで、
いろんな異なる色を上手に着こなしたりしている。
ピンクのワイシャツや白いスーツなんかは
ほとんど当たり前に普通の人が着ているし、
テレビのショーなんかではグレーや紺の無地の服なんかはありえなく、
赤、青、黄の原色が乱れ咲いているような状態。
日本でそんなの着ているのが林家ペーとパー子だけだということを思えば、
この差理解いただけると思います。
デパートの売り場では、
(ブランドショップは別にして)服は形ではなく、色別に並んでいる。
赤コーナー、青コーナーという感じ。
選ぶときはまず色から入るんでしょう。
あのジャケットに合うのは黄色しかないから…なんてね。
こんなに色にこだわる人々だから、
ルノワールとかドラクロワとかシャガールとか、
ああいう絵描きが出てくるのも分かる気がする。
ちなみに周りにいる他国人の傾向を見てみると、

・オランダ人…黒のみ。コートだろうが靴だろうが、黒の濃さしか違いがない。
(ゴッホは別にして)レンブラントやフェルメールは白と黒ですごく印象的だけど、
国民全体があんな色彩感なのにはびっくりした。
一説には牛の色の借用と言うが。とにかく地味。

・ドイツ人…黒と(とてもよく磨いた)シルバー。
これはこれでカッコよい。すごく。
でもちょっと嫌なナチも思い出してしまう。
ワーグナーのオペラを思わせる。
そういやベンツのコーポレートカラーも黒地にシルバーだったっけ。

・イギリス人…グレーか黒にベージュ。仕立てはよいがやっぱり地味。
僕の仲間に常にベストを着ている英国人(28歳)がいる。
身なりは一番「きちっといていること」に気をつけていると思う。
むしろ「派手」さを嫌っているのではないか。

・欧州赴任の日本人…めちゃくちゃ。
日本にいたときよりかはずっと皆気を使っていて、
それぞれにおしゃれをしようとしているけど、
一本筋がとおったものがない。
悪徳不動産と見間違うような人までいると思えば、
全身アルマーニで常に固めて、
しかもそれと思わせないつわものまでいる。

フランス人の色彩感覚は、服以外の面にも存分に発揮されている。
たとえばクリスマスの時期にオペラ座付近を車で通った時のこと。
ギャラリーラファイエットの建物は三つとも緑色にライトアップ、
向かいのマークス&スペンサーは黄、
隣のプランタンはピンクと、
そのとおり一帯2キロくらいがすごいことになっていた。
ルノーの本社に会議で行ったときのこと。
建てて間もないビルだとは思うけど、
そこの廊下が全部青ベースに赤と黄をあしらった
大柄な幾何学模様のじゅうたん。すごくかっこいい。
休憩所の椅子なんかも、そのじゅうたんに合わせてこの三色が置いてある。
とってもおしゃれ。
僕は就職活動のときやアルバイト時代をあわせると
かなりな数のオフィスを見たことがあるけど、
日本でそんなオフィス見たことない。

車の色はそんな中で結構地味な色ばかり。
白、グレーとか黒とかが多くて、赤でもソリッドなものばかり。
こんな感じ↓



なんでかな?
車は気軽に服に合わせて色を変えたりできないからかな。
いっぺん買ったらずっと服をその車の色に合わせなくてはいけないなんて
無理だからかな。
でもこんな人々だから、いい色があれば飛びつくんだと思うけど。

日頃使っているものに目を移すと、
・トイレットペーパー
フランスのトイレットペーパーの基本色はピンクです。
他には少数派ながら青と白が売っている。
だからスーパーのトイレットペーパー売り場はトリコロールなんですね。
フランス人は三色買いだめして、そのときの気分や着ている服に合わせて、
尻を拭く紙の色を決めているのだろうか?
・ティッシュペーパー
今うちで使っているのは、緑とオレンジが一枚ずつ交互に出てくるやつ。
結構使っていて気分がよい。

話がちょっと横にそれるけど、気になっていることが一つあります。
ヨーロッパで和風とか日本とかがブームになっていて、
漢字のついた服を若い人が結構着てたりするのだけど、
そういうものが置いてあるコーナーって
必ず木でできた真っ黒い棚とかテーブルなんですよ。なんでですかね?
おすし屋さんとか和食屋さんでも(日本人だけしか相手していないところは別だけど)
必ず真っ黒。
そういえばコムデギャルソンは日本のデザイナーですね。
他のアジアの国を見ると、
中国は赤だし、韓国料理屋に行って真っ黒かったというイメージはないから、
あれってヨーロッパ人共通の日本を示す色なんだろうね。



しかし何で真っ黒なんだろうか。
想像するに、漆の塗り物の色とか、水墨画、禅のイメージみたいなものから
来ているのかな、と。
でもそれは日本を表すものの、本当に小さな一部分でしかないはず。
黒だけのインテリアなんて、室町時代の後期に流行ったきりで、
そのあとなんか黒で塗ったところに必ず
朱色や黄金の蒔絵で飾って華やかにいていたわけだし、
着るものにしても、うぐいす色とか萌黄色とかえんじ色とか、
結構華やかなものが好きな人たちだったんでしょう。
日本をこの絵画史を見ても、
確かに水墨画の時代もあるけど、
大部分はむしろ華やかな色彩美を競っているところの方が多いでしょう。
尾形光琳、写楽、広重、竹久夢二、東山魁夷、平山郁夫、岡本太郎etc。

もっと日本らしさを表す色を別に探してもいい気はする。
うぐいす色のスーツなんかいいじゃないですか?
結構日本人に似合うと思うのだけど。
ヨーロッパ人にもきっと漢字以上に新鮮に映ると思う。

色の話のついでに、最後に飛行機で空から見た色の違いについて。
日本を空から見た色って、蛍光灯の白い色が基本で、
それにネオンや道路の別の色が時々混ざっている感じ。
オランダは全然違ってオレンジ一色。
黒と一緒にもう一つの国民色なんだと思う。
あと目立つのは、花畑を夜照らしつづけるライト。
すごく明るいオレンジ色。
フランうの色は意外にもただの白。
ただしどことなく青光りしている。
なんでもフランスの電気は原子力発電だから、青白く見えるんだって。
発電所が調子のよいときは青さが際立ってくるとのこと。
ぜひご確認ください。